兄弟相続をする場合のよくあるトラブル事例
目次
兄弟姉妹が法定相続人になるケースと法定相続分について
ケース①:相続人が配偶者と兄弟の場合
被相続人に配偶者はいるが、子供・孫・親・祖父母がおらず(既に他界など)兄弟姉妹がいる場合は兄弟が法定相続人になります。
相続人が配偶者と兄弟の場合、配偶者の法定相続分は相続財産の4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は相続財産の4分の1です。
兄弟が複数人いる場合は相続財産の4分の1を兄弟の数で割ります。
4人兄弟の長男(既婚)が死亡したケースで、相続財産3000万円を分配する方法
長男には、配偶者はいますが、子や親はおらず、3000万円の相続財産があります。
この場合、法定相続人は配偶者・次男・三男・長女となるため、法定相続分は4分の3、兄弟が4分の1となります。
しかし、兄弟は3名いるので次男・三男・長女の法定相続分は12分の1となります。
よって、配偶者が2250万円、次男が万円250万円、三男が250万円、長女が250万円の相続財産をそれぞれ受け取ることになります。
ケース②:相続人が兄弟のみの場合
被相続人(亡くなった方)に配偶者・子供・孫・親・祖父母がおらず(既に他界など)兄弟姉妹がのみの場合は兄弟姉妹が法定相続人になります。
相続人は兄弟姉妹のみの場合は、兄弟姉妹の法定相続分は相続財産の全てです。
兄弟姉妹が複数人いる場合は、相続財産の全てを兄弟姉妹の人数で割ります。
ケース③:4人兄弟(次男・三男・長女)の長男(独身)が死亡したケースで、相続財産3000万円を分配する方法
長男(独身)には、子も親もおらず3000万円の相続財産があります。
この場合、法定相続人は、次男・三男・長女になるため、それぞれの放置絵相続分は3分の1となります。
よって、次男が1000万円、三男が1000万円、長女が1000万円の相続財産をそれぞれ受けとることになります。
兄弟姉妹が法定相続人になるケースとは?
法定相続人とは、民法で定められた相続人(遺産を受けとる権利がある人)のことをいいます。
被相続人(亡くなった方)の配偶者は常に法定相続人になり、それ以外の親族には法定相続人になる順位が民法で定められています。
この順番のことを相続順位といい、第1順位は子、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹になります。
順位 | 法定相続人 |
---|---|
常に相続人 | 被相続人の配偶者 |
第1順位 | 子供(直系卑属) |
第2順位 | 親(直系尊属) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
被相続人(亡くなった方)に兄弟がいるからといって、必ずしも兄弟姉妹が法定相続人になるわけではありません。
上記の相続順位の図を見てわかるように、被相続人(亡くなった方)に子供・孫・親・祖父母のいずれかがいる場合、兄弟は法定相続人になりません。
兄弟には遺留分が認められない?
被相続人(亡くなった方)が遺言書を作成していた場合、遺言内容は法定相続分よりも優先されます。
そのため、遺言内容によっては相続人が相続財産をまったく受け取れなくなってしまうおそれがあります。
そのような事態に備えて、民法では遺留分という制度を定めています。
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に対して最低限認められている遺産の取り分をいいます。
遺留分を侵害された人は、他の相続人や遺贈・贈与を受けた人に対して、その侵害額を請求することができます。
例えば、相続人が配偶者のみの場合、配偶者の遺留分は相続財産の2分の1ですが、被相続人が「遺産は全て愛人に渡す」という遺言を書いていた場合、配偶者は遺留分である相続財産の2分の1を相続できていないので、配偶者は愛人に対して、相続財産の2分の1を渡すように請求することができます。
ただし、遺留分が認められる「一定の範囲の法定相続人」には、被相続人の兄弟姉妹(および甥・姪)は含まれません。
そのため、被相続人が「遺産は全て愛人に渡す」という遺言を遺していても、兄弟には遺留分がないため、愛人に対して遺産を請求することはできません。
兄弟が相続人の場合の注意点
①再代襲がない
再代襲とは代襲相続人が相続開始前に亡くなっていた場合に、更にその相続人が代襲する事です。
曾祖父が亡くなった場合、亡くなった方の子供も孫も既に亡くなっていれば、その下のひ孫が代襲相続をします。これが再代襲です。
兄弟の相続では、相続人の兄弟が先に亡くなっていた場合、その子供が代襲相続しますが、その子供も既に亡くなっていた場合でも相続人の兄弟の孫が再代襲をする事はありません。
②戸籍の収集が大変
相続が開始すると相続人の確定をするために、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を全て取得する必要があります。
更に、兄弟姉妹の死亡の場合は、以下の戸籍を全て取得しなければなりません。
・被相続人(亡くなった兄弟姉妹)の戸籍の全て(子や配偶者が存在しないことを証明するため)
・両親の出生~死亡までの連続した戸籍謄本の一式
・相続人となる兄弟姉妹が既に亡くなっていた場合、その兄弟の出生~死亡までの連続した戸籍謄本の一式
兄弟姉妹での相続で気を付けていただきたい事の一つはこの戸籍収集です。
一般的な相続での戸籍収集と比較して、兄弟姉妹での相続では、戸籍収集の量が多く、手続きが煩雑になります。
ご自身で手続きを行う場合は、必要書類に漏れがある場合、再度書類を取得することになり、相続手続き完了までに莫大な時間がかかってしまうので、注意しましょう。
③相続税が20%高い
子供や親などの一親等の相続人と比べ、それ以外の相続人や受遺者は20%の相続税の割り増しがあるため、遺産分割の際などに注意しておく必要があります。
相続トラブルを防ぐために
①遺言書を書いてもらう
相続トラブル防止のための方法として一番効果的なのが、遺言です。
遺言があれば無駄な紛争を防止でき、多くのトラブルを回避することができることが多いため、「遺言を書いてもらっておけばよかった。」と後悔しないように、両親にしっかりと説明して遺言を書いてもらえるように積極的に行動すると良いでしょう。
②財産内容を明らかにしてもらい、財産の管理方法やルールを明確にしておく
相続人が予想してた相続財産より、現実の相続財産が少なかった場合や他にも財産があるのではないかと疑いが残るような場合、トラブルに発展する可能性が高くなります。
相続発生後に兄弟姉妹の間で疑心暗鬼にならないよう、元気な今のうちに財産内容を聞き取り、兄弟姉妹間で共有しておくと、相続トラブルのリスクを少しでも減らすことができます。
また、親が認知症を発症したり、施設に入所することになった場合に備えて、誰が両親の面倒を見るかや、財産の管理方法などのルールを事前に明確にしておきましょう。
兄弟姉妹間でよくある相続トラブル
兄弟姉妹間でよくある相続トラブルについて実際の事例を基に、解説させて頂きます。
相続財産の多くが不動産で兄弟間トラブルになるケース
状況
鹿児島市にお住まいの女性の方からのご相談でした。
父が亡くなったことにより、相続が発生したため、相続手続きのご依頼でした。
母は既に亡くなっており、相続人は相談者と兄弟である長男の2人とのことでした。
相続財産としては父名義の土地と建物だけでしたが、遺産分割協議を行った際にどちらが不動産を相続をするか話し合いがまとまらないため、協議が進まない状態でした。
当事務所からの提案&お手伝い
不動産を2人で相続しようとして協議が進んでいないという事で、不動産を売却して発生した現金を分割することを提案しました。
結果
双方ともに現金による分割で納得していただいたため、売却を前提とした法定相続分での相続登記を行いました。
その後、鹿児島市の不動産業者に依頼し、無事に不動産の売却及び売却代金を分割することができ、解決することができました。
不動産は高額なものが多いため、相続財産のうち、不動産価値の占める割合も高くなります。
更に、土地や建物は柔軟な分割ができないため、兄弟姉妹間で不公平な分割内容にせざるを得ないケースが出てきてしまいます。
事前に相続財産の管理方法やルールを明確にしておき、トラブルにならないように対策を取っておくことが必要です。
親の世話をしていた兄弟姉妹がいる場合
状況
一人で暮らしている母がいます。父親が既に他界しており、母の近所に住んでいる長男が妻と協力して母親の面倒を見ていました。
次男は遠方に住んでいるため、実家に顔を出すのは年2回程度です。
母親が亡くなり、相続手続きを進める際に、次男は長男に両親の世話をしてこなかったことを理由に、相続をする権利がないと言われました。
ポイント
このようなケースにおいて検討されるのは、民法の寄与分という制度です。
寄与分とは、相続人の中に親の財産の維持や増加について特別な寄与をした相続人がいる場合に、その貢献行為を金銭で評価し、それに相当する額を法定相続分に上乗せすることで相続人間の公平を図る制度です。
しかし、療養看護について寄与と認められるには、専属的に看護療養することで看護費用の支出を逃れ、相続財産を維持させた場合に認められるなどと非常に限定的です。
そのため、一般的な親子関係であれば通常行うような看護であり、また、施設に入所させているような場合は寄与が認めらない可能性もあります。
寄与分が認められなければ相続分は変わらないので、年に2回しか顔を出さなかった他の兄弟と相続割合は等分ということになります。
つまり、被相続人であるご両親のお世話をしていなかったからといって、特定の相続人の相続分を奪うような権利ではないということです。
また、この寄与分の具体的な割合を決める方法としても、原則として相続人同士の話し合いによって行われるものであり、ある相続人から一方的に決定されるものでもありません。
万が一、話し合いで決定されることがなければ、家庭裁判所に対して申し立てを行い、決められることになります。
このようなケースは、最悪、紛争トラブルに発展する場合があるため、兄弟間で事前にしっかり話し合いの場を設けておく必要があります。